第4章 嫉妬と仇討ち
「どうしてあんたの責任になるの?理由はどうあれ嫌がらせをすること自体が間違ってる。だから早く信長様に言えって言ったんだ。あんた女の子なのに頭に怪我なんかして…もう少し傷が深かったら縫って傷が残る所だったんだよ」
家康は不快感を露わにして私を擁護する言葉をくれる。
「家康ありがとう。この怪我も家康が手当してくれたの?」
「手当ては確かに俺だけど、あんたの看病をしたのは信長様だ。礼なら俺じゃなくてあの人に言いなよ」
家康は素っ気なく言うと、テキパキと新しい包帯を私の頭に巻いて行く。
「そうだぞ。お前を池から救い出してからずっと、信長様はお前の側を離れずに看病をして下さったんだ。今は朝廷からの使者が来て仕方なくその対応に向かわれたけどな」
「秀吉さん…」
信長様が私を池から救い出してくれた?しかも看病まで………!?
それをどう受け止めれば良いのか正直分からないし、信じられない。
「目覚めたようだな」
理解できない心にもやもやしていると信長様が戻って来た。
「じゃ、俺たちはこれで」
家康は立ち上がり、
「疲れも溜まってたようだから、ゆっくり休めよ」
私の肩をぽんっと撫でて秀吉さんも立ち上がり、二人は部屋から出て行った。
「気分はどうだ?」
信長様は布団の横に腰を下ろして胡座をかいた。
「大丈夫です」
「そうか……」
気まずい沈黙が流れる。
もう数え切れないほどに肌を重ねたと言うのに、こんな時何を話せば良いのか分からない。そりゃそうだ。私たちは…体だけの関係なんだから……
強い視線から逃げるように目を逸らして下を向く。
「痛むか…?」
信長様はそう言うと私の頭に巻かれた包帯に手を触れた。
「いえ、そんなには痛みません」
看病をしてくれたと聞いたからか、私を見る目が心配してくれている様に感じる。
(って、そんなわけないよね……)
「なぜ何も言わなかった?」
「え?」
「針子たちからの仕打ちの事だ、なぜすぐに言わなかった…?」
「それは…信長様に言った所で何も変わらないからです」
信長様に相談をしようと思ったこともないけど、こう言う事は、言えば余計酷くなると分かっているから相談なんて出来るわけがない。