第4章 嫉妬と仇討ち
それからいく日かが過ぎ、信長様の羽織の仕立てに時間はかかったけれども、少しずつ完成に近づいていた。
日中は針子部屋で作業をして、夕方以後は着物を自室へと持ち帰って遅れを取り戻すべく作業を続けた。
そして…
「出来たっ!」
人生初挑戦の羽織りが完成!
相手が誰であろうと品物に罪はない。しかも初挑戦と言う事もあって、いつも以上に慎重に、一針一針丁寧に仕上げた。
「後は確認してもらってオッケーが出れば信長様にお渡しできるっ!」
お帰りは確か明日だって人伝いに聞いた。
楽しみだって言ってくれていたし、きっと喜んでくれるはず………
「って、別に喜んで欲しくてやった訳じゃないし…」
そうこれは、これからも帰蝶と会うために必要な作業だったから…ただそれだけの事。
決して信長様に喜んで欲しい訳じゃない………
・・・・・・・・・・
「……え?」
「ですからお疲れ様でした。これは私から秀吉様にお渡しして、信長様へと渡して頂きます」
針子部屋へと持って行くと、オッケーは出たものの、私から直接渡せない事が告げられた。
「……あ、分かりました。では、宜しくお願いします」
「随分と時間が掛かりましたね、紗彩様の仕事溜まっていますよ。急いで取り掛かってくださいね」
「……はい。すみませんでした」
個人的に買った反物で作った羽織りではないし、しかも朝廷からの反物だから、針子頭から秀吉さん、そして信長様へと渡すのが正しいに決まってるけど…少しだけ物足りない。
そんな物足りなさを飲み込んで頭を下げ、自分の作業場所に腰を下ろした。
(本当だ。これ全部私の仕事かぁ…)
私の場所にこれみよがしに積み上げられた反物の山にため息が出る。
はぁ〜っと小さく息を吐いていると、針子頭が私の仕立てた羽織りを手に持って部屋の外へと出て行った。