第12章 愛しき者の正体
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「信長様、ご無事で」
大広間では秀吉はじめ全ての武将が揃い俺の帰りを待っていた。
「秀吉、待たせたな」
「っ、顔にケガを…」
「かすり傷だ。騒がずとも良い。それより軍議を始める」
俺の頬の傷を案ずる秀吉を手で制して上座に腰を下ろした。
「ふっ、今すぐにでも出立出来そうだな」
皆甲冑を身につけ、やる気十分とばかりに闘志がみなぎっている。
「俺を一番手に行かせてくれ」
口癖のように政宗は一番隊を願い出る。
「政宗さん、今回は俺も譲れませんよ」
そして家康も決まり文句を口にする。
だが、
「此度は慶次に指揮を取らせる」
「俺がっ!?」
はなから一番手など期待していなかったのだろう。奴は分かりやすく自らを指差し驚いて見せた。
「何をそれ程に驚く?天主砲撃よりこれまで、貴様の報告が無ければもっと手痛い結果となっておった。それに、先程貴様は俺の命で兵は如何様にも動かせると…そう言っておった。相違ないな?」
「はっ!相違ございませんっ!」
「ならば貴様が先陣を切り、織田軍復帰後の初勝利を飾るがいい」
「はっ!ありがたき幸せっ!」
慶次は畳に着くほどに頭を下げた。
「異論のある者はおらんな」
俺の問いかけに、皆静かに頷いた。
「ではこれより、帰蝶並びに毛利元就と足利義昭の討伐へと向かう!場所は本能寺、この日ノ本をさらなる戦乱に陥れようとする奴等の動きを封じ込め、天下泰平の世への布石を投じる!」
「「「「「「はっ!!」」」」」」
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甲冑を身に着ける前に、紗彩の眠る部屋へと足を運んだ。
「あ、信長様」
襖を開けると紗彩の侍女の花が俺を見て頭を下げた。
「花、紗彩の様子はどうだ」
「依然眠られたままです」
「そうか」
眠る紗彩の隣に腰を下ろして奴の頬に触れた。