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おとぎ話の続きを聞かせて【イケメン戦国】

第12章 愛しき者の正体



廊下へ出て叫び、外へと向かう。


「信長様、一人では危険です。俺もお供しますっ!」

慶次が俺を追いかけ共に向かうと言うが、

「いや、俺一人で行く」

あの男は、必ず俺が来るのを待っている。

「ですが……っ!」

「案ずるな。帰蝶とは会って話をするだけだ。貴様は広間へ行き、秀吉達と共に戦の準備に取り掛かかれ!攻めるは帰蝶と毛利率いる足利義昭軍。合戦場所は、俺が戻り次第伝える」

合戦場所、帰蝶に会えばそれも分かるであろう。


「はっ!」

頭を下げる慶次を残し、俺は馬に飛び乗り帰蝶の待つ呉服屋へと向かった。




紗彩とは、出会いからして不自然であった。


敵や裏切り者を炙り出す為、如何なる時でも僅かな隙を作っている俺は、あの日、本能寺に於いても同様に、敵の侵入を許す形の警備しか敷いていなかった。

それにまんまとハマり仕掛けてきたのが、小姓である蘭丸で、それにより奴が顕如側の者であることが判明した。

しかし予想以上に良い働きをした蘭丸により俺の命は危険に晒され、それを紗彩に助けられた。


記憶がない。気がついたら本能寺にいた。俺のことは知らないと、嘘しか吐かぬ女には不自然さしかなかったが、そんな事は何の枷にもならぬ程に、奴を手に入れたい衝動が抑えられず、感情のままに奴を攫い安土へと連れ帰った。

警備を手薄にしてあったとは言え、女の身でそう易々と入れるほどあの日の警備は甘くはなく、俺が来る以前よりあそこへ逃げ込み隠れていたとばかり思っていたが、帰蝶の手引きで、寺に潜り込んだのか…


「納得のいく答えだ……」


記憶喪失を装ったのは正体が明かされるのを防ぐため。
針子の仕事に就きたいと願い出たのは、呉服屋で帰蝶と定期的に連絡を取り合うため。

そして、口づけを拒み続けたのは、奴なりの帰蝶への想いを示したと言うことか…


帰蝶と言う接点が分かれば、面白いほどに謎が紐解かれて行く。


「だが、まだ解けぬ謎はいくつかある」


天主砲撃後の紗彩の態度の変化や、奴の体を蝕む原因不明の病……
帰蝶は、あの男はおそらく全てを知っている。そのためにも俺は、奴に会わねばならん。


「はっ!」

はやる気持ちを抑えて馬の腹を蹴り上げ、安土城下を駆け抜けた。




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