第12章 愛しき者の正体
「…………」
どう言う事だ?
いや、この件と紗彩が関係あるはずがない。
だが、本能寺の変以前と天主砲撃後から商館襲撃まで……
それは、紗彩が俺の側にいなかった期間と一致する。
偶然の一致やもしれんが……
華奢で儚げ、そして美しい女……
考えれば考えるほど、その女は紗彩に当てはまって行く。
いや、それよりも前から俺はある違和感を感じていた。
側室でも正室でもない紗彩に、なぜ帰蝶が人質の価値を見い出したのかと言うことを……
あの時は二人に共通点などはないと思い深くは考えなかったが、確かに引っ掛かりを覚えていた。
紗彩は帰蝶と繋がっている!?
だとしても、奴が俺の命を狙って来たことなど一度もない。それどころか、俺から如何にして逃げるかを、ここに連れて来た当初は考えていたはずだ!
もしも二人が繋がっているのならば、一体何のためだと言うのだっ!?
「………ふっ、考えた所で答えは出んな」
俺は立ち上がり紗彩の眠る続きの間の襖に手を掛けた。
慶次は紗彩の存在を知らない。
いや、俺が特定の女を側に置いていることは知ってはいるだろうが、会ったことはないはずだ。
前回の商館襲撃の際も、表向きは天主砲撃に対する帰蝶への報復となっており、紗彩奪還の件はごく一部の者にしか伝えていない
「慶次、貴様に会わせたい者がいる」