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おとぎ話の続きを聞かせて【イケメン戦国】

第12章 愛しき者の正体



「……そうか。あの男も人であったと言うことだ。今は行方が分からぬと言うのならば放っておけ」

(女の一人や二人、大した影響はない。どの道俺には関係のない話だ)

「まぁそうですね。失礼しました」

慶次はそう言ったものの、

「だがあんな一人じゃ生きてけなさそうな女…本能寺の変以降からこの間の商館襲撃の間どこにどういたってんだろうな……?」

ブツブツとその女のことを独り言のように呟いた。

「………待て、今何と言った?」

本能寺の変以降から前回の商館襲撃までの間…と言う言葉に妙な引っ掛かりを覚えた。


「いや、その女なんですが、本能寺で信長様が襲われる前日までは帰蝶と堺の港町を歩いているところを目撃したんですが、なぜかその日以来パッタリと姿を消しちまいまして、それから大分経ってからまたひょっこりと姿を現したんです。屋敷の中にいた気配もなかったし、まぁ実家にでも戻ってたんでしょうけど、このご時世、姫や貴族でもない限り女が里帰りするのは珍しい事なんで不思議だと思って……」


「………….その女が再び現れた日が、いつかを思い出せるか」

俺の中で、前にも感じた引っ掛かりが頭をもたげる。

「はっ、忘れもしません。あれは天主が砲撃された直後でしたから……。つっても今回は俺が直接見たわけじゃなく、帰蝶の商館に入っていくのを見た奴がいたってだけですが………」

「そうか……」

天主砲撃の後。
それは、紗彩が帰蝶に攫われ安土より姿を消していた時……

攫った紗彩を連れて商館に入った姿を見たのならば、それは紗彩であって帰蝶の女に見間違われただけやも知れん。

「その時の女は…おそらく違う」

背丈が紗彩に似ていて見間違うことは十分に考えられる。

そう思ったが…

「いいや、他の女なら見間違えることもありそうですが、これがとんでもねぇ別嬪さんで、見間違いようがありません」

慶次の言葉で、一瞬時が止まった。



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