第12章 愛しき者の正体
「っ………」
紗彩の頬は途端に赤く染まり、俺の中はさらなる欲で膨らんでいく。
「貴様の初めてを共にすると言うのは、嬉しいものだな」
「ぁっ……!」
堪えきれず奴を腕の中に閉じ込めた。
「思い出せ。あと何を貴様はした事がない」
「え?」
手を握られるだけで頬を染め、抱きしめれば耳まで赤くなる紗彩に己の欲望は高まるばかりで、
「信長様……?」
「今後、貴様の初めては全て俺によこせ」
「私の…初めてを..ですか?」
「そうだ。これは命令だ」
奴の全てが欲しくて、女に言った事もない独占の言葉を吐く。
「っ………、そんな、命令だなんて…」
奴の笑顔は途端に引っ込み、悲しみにも似た困惑の表情を見せる。
「俺の命令は絶対だ。反論は許さん」
(もう誰にも貴様の何も奪われたくはない)
「んっ、」
紗彩が反論を口に出す前に、俺は奴の口を塞ぎ華奢な体を絨毯の上に倒した。
(姑息な男だと自覚はしていたがこれ程とはな…)
初めは側に置いて気の向いた時に愛でればいいと思っていたはずが、奴の何かを手に入れるたびにもっと手に入れたいと、己の欲は尽きるところを知らない俺は、命令と言う言葉で奴を縛り付ける。
「……っ、はぁ、……分かりました。でも、命令を聞くからではありません。私が、そうしたいから…、だから、私に差し出せるものがあるのなら、それは全て信長様に捧げます」
蕩けた顔をしながらも、紗彩ははっきりと自分の考えを口にする。
「ふっ、相変わらず可愛げのない女だ」
貴様の前では、俺はただの駄々っ子に成り下がってしまう。
だがそれすらも心地良い。