第11章 別れの準備
行燈の灯りだけの部屋の中、信長様の綺麗な顔は艶を帯びて見える。
「っ………」
絡め取られた指先からじわじわと熱が上げられていき、それだけで自分の呼吸が早くなって行く。
「貴様の初めてを共にすると言うのは、嬉しいものだな」
その言葉にドクンっと胸が鳴るのと、腕を引かれたのは同時で、
「ぁっ……!」
次の瞬間には、私は信長様の腕の中に閉じ込められていた。
(信長様の行動はいつも読めなくて心臓に悪い)
頬に急に感じる信長様の胸板に、熱は更に上げられて行く。
「思い出せ。あと何を貴様はした事がない」
「え?」
思いもよらない言葉に顔を上げて信長様を見ると、焦りや嫉妬、独占欲など、あらゆる欲に駆られた目に絡め取られた。
「信長様……?」
「今後、貴様の初めては全て俺によこせ」
「私の…初めてを..ですか?」
「そうだ。これは命令だ」
「っ………、そんな、命令だなんて…」
「俺の命令は絶対だ。反論は許さん」
「んっ、」
反論させない様に、信長様は私の口を信長様の口で塞いだ。
口づけながら、私の体はゆっくりと絨毯の上に倒されて行く。
私の初めてが欲しいなんて、そんなものを欲しいと言ってくれる気持ちに心はキュンっとなりながらも、信長様が初めての相手ではない事を遠回しに責められている様な気がして、同時に痛んだ。
「……っ、はぁ、……分かりました。でも、命令を聞くからではありません。私が、そうしたいから…、だから、私に差し出せるものがあるのなら、それは全て信長様に捧げます」
命令なんて言い方をしなくても、私は喜んで私の全てをあなたに差し出せる。
「ふっ、相変わらず可愛げのない女だ」
言葉とは裏腹に楽しげな笑みを浮かべた信長様は、私の夜着の紐を解いて素肌へ触れて行く。
「……んっ、」
「貴様は俺のものだ。誰にも渡さん」
強い独占の言葉と、胸が苦しくなる程の口づけ。それに初めてのお酒が手伝って私を酔わせて行く。
「っぁ、」
自分の体のはずなのに、
「ふっぁっ、ぁっ」
信長様に操られているみたいに、信長様の手で濡れ開かれていく。