第11章 別れの準備
「なっ、紗彩お前っ、せっかくの信長様のご厚意を…!」
「秀吉良い、それは紗彩にやったものだ。紗彩の好きにして構わん」
「ありがとうございます」
鳥籠を開けて鳥を手の上に乗せた。
もしかしたら、この鳥にとっては籠の中の鳥でいることの方が安全なのかもしれない。
でも、もしも私と同じ気持ちなら、好きなところへ飛んで行って自分の選んだ道を進みたいはず。
「大変なこともあると思うけど大丈夫。好きな所へ行って幸せになるんだよ」
腕を上に上げると、インコもバッと羽を広げて飛び上がった。
「元気でね」
ピピっと私の言葉に返事をしたように声を出したインコは、私たちの周りを何周かした後、空高く飛んで行った。
空を見上げていると、突然後ろから抱きしめられた。
「っ、信長様?」
「捕まえておかねば、貴様も飛んでいきそうだからな」
苦しいくらいに抱きしめて、切ない声でそう言った。
「っ……」
(そんな、切ない声を聞かせないで。私は、あなたの人生を変えた酷い女なのに……)
信長様の気持ちを感じる度に、自分の犯した過ちが重くのしかかる。そしてその罪への罰は確実に今この身に降りかかっている。
「私にはどこにも行く場所はありませんから。どうかここに、お側に置いて下さい」
信長様の手に頬を寄せて気持ちを伝えた。
「離さぬと言っておる。なぜ貴様は……っ」
信長様は苦しそうに目を細め、
「っん!」
苦しい程の口づけを私にする。
不安なんだ……
第六天魔王とまで呼ばれるほどの人を、私が不安にさせている。
こう思う事が思い上がりならばどんなにいいか…
「ん、…っぁ、」
でも、こんなにも熱い口づけをされた事がないから…
こんなに思いのこもった口づけをしてくれるあなたを残していくことがとても辛い。
(私…あとどれくらい信長様といられるんだろう…)
私の命が尽きる前に信長様が私に飽きて、存在すらも忘れてくれれば、私が消えても悲しむ事はないのに……