第11章 別れの準備
・・・・・・・・・・
その日の夕方には布団から起き上がり中庭へ出て歩けるようになった。
「紗彩 」
そこへ信長様が秀吉さんとやって来た。
「具合はどうだ」
「はい。すっかり良くなって、今お庭を歩いて体力をつけていた所です」
「そうか」
チュッと、信長様の唇が私の唇を掠めた。
「っ……、いきなりは…困ります」
「俺は困らん。むしろし足りん位だ」
「っ………」
(ダメだ。どんどん信長様の行為が大胆になって行く)
教室の中や電車の中でも気にせずにベタベタするカップルを冷めた目で見て来ただけに、いざ自分がその立場になってみると、恥ずかしいけど嫌じゃないなんて思ってしまう。
「信長様、これを」
少し気まずそうな顔をした秀吉さんが、信長様に布が掛かった大きな物を渡した。
「紗彩 、貴様にこれを持ってきた」
信長様がそう言って布を取ると鳥籠が姿を現し、中には一羽の白い小鳥がいた。
「鳥……?」
近づいて中を覗くと、現代でも見たことのある鳥が中に…
(インコかな?白のインコは初めて見たけど…)
「大陸より連れて来たと聞いている。言葉を教えれば話すようになるらしい」
「そうなんですね」
(やっぱりセキセイインコだ)
可愛い。と言って手に取りたかったけど籠の中の白いインコは震えているように見える。
「大丈夫、怖がらないで」
遠い異国から知らない国へと連れて来られ飼われる身となってしまった事に怯えている姿が以前の自分と重なって見えて、手に取ることをやめた。
「信長様、この鳥、逃してあげてもよろしいでしょうか?」
そして次の瞬間には、そんな言葉を口にしていた。