第10章 真っ白なページ
事故で両親を失った日からずっと、寂しくて寂しくて苦しくて…この苦しみから助け出して欲しいって思ってた。
優しさが欲しかった。
温もりが欲しかった。
誰かに抱きしめてもらいたかった。
愛されたかった。
それを全部与えてくれたのが帰蝶で、私の全てだと思ってた。
「帰蝶私ね、よく夢を見たの。帰蝶がまだ学生で私も学生の夢。帰蝶はもちろん全校女生徒の憧れで私にとっては遠い存在。でもある日そんな帰蝶が私を好きだと言ってくれて、二人は付き合い始めるの。手を繋いで登下校をして帰りはカフェで一緒に勉強をして…。帰蝶は頭が良いからバカな私に根気強く勉強を教えてくれて、今度のテストでいい点が取れたらご褒美をあげるって言ってキスをしてくれる、そんな夢……。バカでしょ?叶うわけないのにこんな夢を見て……、でも、あなたの事が本当に好きだったから…、夢でもいいからあなたと一緒に人生を歩んで見たかった」
「それを今叶えてやろうと言っている。お前の残りの人生をお前の望み通りに共に過ごしてやる」
手を伸ばす帰蝶に私は頭を横に振る。
「あなたをとても愛してた。苦しくても、悲しくても、あなたのためならって、そう思えば思うほど苦しかった…」
愛される事を知らなかった私は、それも愛だと思ってた。恋に恋する自分に酔っていたとも知らずに……
「もう辛い事はさせん。心穏やかに暮らせばいい」
その言葉に、私はもう一度頭を横に振る。
「私はもう、あなたを愛してはいない」
「っ、あの男を選ぶと言うのか?」
「選ぶなんて… 私にはそんなことを言う資格はない」
だけど、気づいてしまったから…
愛し愛される事は、辛い事ではないって事を…
帰蝶を愛してた時はただ辛かった。
幸せだったけど、いつも辛かった。
愛が欲しくて、振り向いて欲しくて、捨てられたくなくて…
でも信長様は違う。
信長様のためにと思う事で辛い事は一つもないの。
何かを返してもらおうとか、与えられたいとかも思わない。