第10章 真っ白なページ
「違う、私のせいだっ!私が歴史を変えたから…未来が変わってページが消えてしま……」
自分で口にしている言葉に、ある一つの考えがよぎり言葉を失った。
ちょっと待って……!
歴史が変わった事でページが真っ白になって未来の情報が消えてしまったって事は、
(もしかして…私も消えるってこと………っ!?)
「最近の体調はどうだ?」
恐ろしくて、縋るような視線を帰蝶に送ると、待ち構えていたような言葉が返って来た。
もう、聞かなくても分かってしまった。
体調不良の原因は、私が、未来の人間である私が消える兆候だって事っ!?
「っ、…帰蝶はこの事を知ってたの?」
「……ああ、知っていた」
「!」
(私が、消えてしまうって分かっていたのに協力させたんだ?)
分かっていたけど、表情ひとつ変えずに答える帰蝶に愕然としてしまう。
「お前はよくやった。もうあの男の元に戻らなくていい」
「え?」
「お前を迎えに来た。お前の残りの人生を共に過ごしてやる」
震えの止まらない私の手を両手で包み込み、彼は優しい声でそう言った。
「私を…迎えに来たの?」
「そうだ」
彼は、今度はふわりと優しく私を抱きしめた。
「っ………」
目頭が急速に熱くなって涙が溢れた。
「泣くな。もう辛い事はない。静かに俺の側で過ごせばいい」
長くて冷たい指が、私の涙を拭う。
私の知ってる、出会った頃の帰蝶。
この言葉をずっと待ってた。
どんなに辛くてもきっといつか彼が迎えに来てくれるから、それまでは頑張ろうってずっと……
でも、
「………行かない」
「何?」
「私は、帰蝶とは行かない。信長様の元へ帰る」