第10章 真っ白なページ
「俺が何を入れるって?」
政宗も楽しそうに信長様の挑発に乗る。
「貴様の事だ、惚れ薬などを入れておらんとも限らん」
「そんなもん入れなくても、欲しいもんは手に入れる」
「ふっ、貴様らしいな」
イケメン二人の自信たっぷりな会話に聞き入ってしまう。
(確かに、政宗ほどの人に見つめられたり好きだとか言われたら、みんな舞い上がっちゃうだろうなぁ)
そんな事を考えてる間に、信長様の手はお粥へと伸びる。
そして匙は土鍋ではなく、私の食べている土鍋の蓋にあるお粥をすくった。
「あ、信長様待って下さい」
口に運ぼうとする信長様の手を慌てて止めた。
「食べるのなら土鍋の中のお粥をどうぞ。私の食べているのだと、私の風邪が感染ってしまうかもしれませんので……」
体調不良の原因が風邪かどうかは定かではないけど、何かしらの菌が感染っては大変だと思い、そう伝えた。
「ならば余計寄越せ。病は他の者に感染せば治ると聞いた事がある。それで貴様が良くなるのならば、いくらでももらってやる」
「えっ、でもっ!」
私の手をやんわりどけて、信長様はパクッとお粥を口にした。
「……っ!」
「ピュー、」
政宗の口笛が合図のように、収まっていた頬の熱が再びぶり返した。
「美味い。何も問題はない」
信長様はニヤリと政宗を見た。
「疑いも晴れたようだし、俺はこれで。紗彩早く良くなれよ」
「う、うん。ありがとう政宗」
政宗も信長様にイタズラな笑みを返して立ち上がり、部屋から出て行った。