第10章 真っ白なページ
「いい顔するようになったな」
「え?」
「表情が柔らかくなった。信長様の事が好きだって顔に書いてある」
「うそっ!!」
書いてあるわけないって頭では分かっているのに、政宗の言葉にまんまと反応してしまった。
「本当だ。さっきも熱い眼差しで信長様のことを見てたしな」
そしてそんな私の反応に、政宗はしたり顔で言葉を続ける。
「べ、別に、見つめてたわけじゃないし…、廊下を知った人が歩いていたら、誰だって目で追うでしょ?」
政宗の鋭い指摘に対して、私は可愛くない言葉を返してしまう。
「なんだお前、気付いてないのか?ここの所いつも信長様の事を目で追ってるって事……」
「っ………」
(うそ、そんなに…見てる?)
「立場逆転だな」
ニヤリと笑う政宗に何を言ってもやり込められそうで、さっきよりもっと熱くなった頬を隠すように手を当てた。
「政宗、それ位にしておけ」
信長様が部屋へと帰って来て、私の隣に座りあぐらをかいた。
(っ、このタイミングで信長様の顔を見るのは無理っ!)
政宗の方をチラリと見れば、楽しそうに意味深な笑顔を浮かべている。
「顔が赤いな。熱でもあるのか?」
何も知らない信長様は私の額に手を当てて熱を計る。ただそれだけのことなのに胸がきゅうっと締め付けられて甘さが広がって行く。
「熱はないようだな」
確認を終えた大きな手が私の額から離れて行く。
(もっと触れてて欲しかったな……)
自然とそんな事を思ってしまう自分にも驚いて、
「っ……」
優しく私を見て笑う信長様からつい目を逸らしてしまった。
「政宗の粥は美味いだろう?」
私の態度を気にした様子もなく、信長様は私の食べているお粥のことに話題を移した。
「あ、はい。とても美味しいです」
「何も入ってないか毒味をしてやる」
信長様は政宗にイタズラな視線を一瞬向けて、私から匙を取った。