第9章 ぬくもり
(………?)
それは、本当に一瞬の事で……
何が起きたのかと思い、離れて行く信長様を見れば、
「っ………」
真っ直ぐに熱のこもった目で見つめられ、自分の唇を掠めたのが信長様の唇だと分かった。
(キス…された……?)
初めて受けた口づけは想像以上に心を震わせ、ブワッと身体中が沸騰したみたいに一瞬で熱くなった。
「怒らんのか?」
「え?」
「俺から口づけられるのは嫌なのであろう?」
「それは…」
確かに前は嫌だった。
体は許しても、唇は絶対に帰蝶としかしないと思っていたけど…
だけど、
だけど今は、
「……嫌…ではありません」
今は、キスされた唇が熱くて、胸の辺りがくすぐったくて仕方がない。
「ならば、もっと口づけでも構わんと言うことか?」
伺う様に私を見つめる信長様…
「そんなこと…」
(聞かれても困る)
甘さや優しさにとことん慣れていない私に答えを求めないでほしい。
恥ずかしさのあまり背けようとした顔は、長い指に阻止されそして引き寄せられた。
「嫌でないのならもっと寄越せ」
「えっ、………っん!」
唇が重なった。
「…………っ、ん……」
さっきの触れるだけのキスとは違う。
「ん…」
角度を変える度に深く強く重ねられて行く。
「ん、………ん、………」
(心臓が、ドクドク言ってる)
差し込まれた舌が私の舌を絡めとる。
「んんっ、」
重なり合った舌を吸い取られ時折甘い刺激を加えられると、体をぞくりと刺激が駆け抜けていく。
「っは、ぁ………」
大きな体にすっぽりと囲われ逃げ場のない口づけが続く。
「……ん、……は、」
食べられているようなキスにふわふわして力が抜け、そのまま信長様にもたれかかった。