第9章 ぬくもり
「っ、貴様…何をしている!」
こんな時、どう慰めればいいのかなんて知らない。
でも私が辛い時、信長様はこうして私を温めて慰めてくれたから…
襦袢にも手を掛けた所で信長様は私を抱き寄せて襖を閉めた。
「っ、紗彩 よせっ!」
今のは、私の裸が見られない様に咄嗟に信長様で私を隠して襖を閉めてくれた。そんな優しい事ができる信長様が苦しんでるのに放っておく事なんてできない。
「信長様、私は、大丈夫ですから」
信長様の腕の中、私は襦袢を肩からずらしてそのまま足元へと落とした。
「…………っ」
信長様の、私を止めようとする腕の力が緩んで行くのが分かる。
信長様の夜着の袷を少し開き、露わになった胸元に唇を当てた。
「っ………!」
信長様の胸の音がドクンと高鳴るのが分かった。
信長様はその場に腰を下ろし、私もその前に膝をついて信長様の胸に手を当て舌を這わせた。
「……くっ」
理性を保とうとする信長様の胸を強く押して体を押し倒し、私はその上に自分の体を重ねた。
「紗彩 」
真紅の目は、まだ私を抱く事に戸惑っている。
「私は…大丈夫ですから。だから私を抱いて下さい」
そう言って私はこの日、初めて自分から信長様を求めた。
傷を舐め合いたかったのかもしれない。
なんでも持っていて完璧だと思っていたこの人にも辛くて拭えない過去があると言う傷を知ってしまったから。
もしくは贖罪だったのかもしれない。
信長様の人生を変えて、騙して、酷いことをしていると言う恐ろしい過ちを起こしてしまった事への贖罪を……
どちらだって構わない。
私は今、この人を抱きしめる事で癒してあげたいのだと、そう強く思ったのだから、それで良いんだ……