第2章 その感情は
多分今私の顔は、大変な事になっているだろう。
それを隠すように、目を逸らして俯いた。
「ばはっ! 顔真っ赤じゃん」
「は? 何その反応。可愛過ぎません?」
手を振り払おうとした私の手首を、逃がさないとでも言うように、更に強く掴み直す。
「よし、話し合おう」
「は、話す事なんてありませんっ!」
「いーからいーから」
手を引かれ、歩き出すけど、その時チラリと見えた女の子と目が合う。
凄く、睨まれてしまった。
一虎に連れて来られたのは、最近お馴染みの裏階段。
階段に座った一虎が、私の手をそのまま引っ張ると、私は一虎の膝に横向きに座る形になる。
「なっ、ちょっ……」
「俺が他の子と仲良くすんの、嫌?」
まっすぐ刺さる視線から逃れようと目を逸らす。
「べ、別にそんなっ……」
顔を背ける私の首筋に、一虎の唇が触れた。
「何してっ……んっ……」
「ねぇ……ちゃんと言ってよ……」
何度も首筋に唇が触れては離れ、ちゅっちゅっと小さな音がして、妙な気分になってくる。
「さっき、ヤキモチ妬いたの?」
「っ……だ、だったら悪いっ!?」
一虎の両肩を押すと、すんなり唇が離れ、一虎のニヤニヤした顔がこちらを見る。
凄く、嬉しそうだ。
「へへ、そっかぁー」
「何がそんなに楽しいのよっ、もうっ! 離してっ……」
「やだーっ!」
ニヤニヤしっぱなしの一虎が私の上半身を、強くぎゅっと抱きしめて離さない。
しばらく二人でじゃれ合い、ふと先程の女の子を思い出す。
「そういえば、さっきの子放って来てよかったの?」
「さっき……あー、別にたいした話はしてはねぇから、いいんじゃん?」
でも彼女にしてみたら、せっかく一虎と話をしていたのに邪魔が入った挙句、横取りされたとなれば、そりゃぁ睨みたくもなるだろう。
私は気になった事を聞いてみる事にした。
「一虎って、モテるの?」
「さぁ、分かんねぇ。でも俺は、にモテたい。他の奴にモテたって仕方ねぇし」
そんな満面の笑顔で言われても困る。
他の子と楽しそうにしているのを見るのは、モヤモヤするくらいには一虎への好意は多少なりともあるとは思う。
けど、それが“好き”という感情に当てはまるのかは分からない。