第5章 離さない、離れない
確かに、前に来た時も電気が点いていなかった。
静かな部屋に、二人だけの足音が響く。
手は繋がれたまま、一虎の部屋に入る。
「シャワー、浴びる?」
「後でいい」
聞いた一虎に、否定の言葉を口にして
今は、早く一虎と繋がりたくて、体が一虎を求めるように熱くなる。
散々肌を重ねて来たのに、妙な緊張感があって、くすぐったい。
じゃれ合って、笑って、キスをする。
「、好き……好き過ぎてどうにかなりそう……。すっげぇ、愛してる……」
「ふふっ、知ってる。私も愛してるよ、一虎」
座る一虎に跨っている私の胸に顔を埋め、上目遣いにこちらを見上げる一虎が、まるで捨て犬のような目をしてくる。
たまらなく可愛くて、頭にキスをする。
ゆっくりじっくりお互いの肌を味わうように、触れて交わって溶けていく。
何度も何度も確かめ合って、二人でベットで寄り添いながら、天井を眺める一虎の首にあるタトゥーに触れていた。
「へへ、くすぐってぇ」
「私も入れようかな、虎」
「お? お揃?」
少し弾んだ声を出した一虎が、少し考えた後に眉を顰めた。
「いや、やっぱ駄目。のせっかく綺麗な肌が傷つくのは嫌だ」
「えー、一虎だけズルい。入れたら意外にエロいかもよ?」
「じゃぁ、尚更駄目。これ以上エロくなったら困る」
断固拒否されてしまい、私のタトゥーお揃い計画が却下されてしまう。
残念で口を尖らせる私の額にキスが落ちて、一虎が私の右の首筋に顔を埋めた。
唇が首筋が這って、吸いつかれてチリリと痛む。
「んっ……ぁ……」
何度も吸われ、妙な気分になる。
「タトゥーなら、俺がこうやって何回でもいっぱい付けてやる」
キスマークの事を言う一虎に、私は笑う。
「仕方ない、諦めてあげる」
言うと、一虎の唇がまた首筋に赤い痕を残していく。
ずっと消えないように、一虎の印を残し続けて、ずっと一虎のものでいられるように。
縛って、繋いで、離さないで。
[完]