第4章 全て愛して愛されて
何時間、いや、何日かもしれないくらい長く感じる。
時計はあるものの、スマホもカレンダーもなくて、今から何日でどれだけここにいるのかが分からない。
「喉乾いた……」
頭が重くて喉もカラカラで、掠れた声で呟く。
ベッドから降りると、足首に繋がる鎖がシャラっと重い音を立てた。
部屋の中を歩き回るぶんには、特に生活に支障はないくらい長めの鎖。
最初は多少は驚いたけど、もう慣れてしまった。
こんな事に慣れるのもどうかと思うけど、私をこの場所に閉じ込めている相手が、好きな相手だというだけで、特に不安も恐怖もない。
こういう思考になる辺り、私もだいぶ歪み、拗れているんだろうと苦笑する。
特に何かある部屋ではないけど、カッターシャツ一枚だけ身につけている状態でも、特に寒いと感じる事はないくらいには、丁度いい温度になっているようで、過ごしやすい。
水を飲んだ後にベッドへ座って、一虎と入れ違いでたまに来る、稀咲君に用意してもらった本を捲る。
彼がおすすめしてくれる本は凄く興味深いから、楽しみの一つになっている。
そして、もう一つの楽しみはもちろん。
「ー。あ、起きてた?」
「ん……おかえりなさい、一虎」
「ただいまー」
一虎が訪れる時には、彼の頼みで必ず「おかえりなさい」と言うようになった。
もちろんほとんどここにいる一虎は、自分の家に帰っているのだろうか。親もいるだろうに、そこが心配だ。
最初に飲まされた薬は、あの日以来飲まされる事はない。
危険はないと言われても、あまり飲みたくはないなと思うわけで。
「何読んでんの?」
「稀咲君がおすすめしてくれた本だよ」
「……そっか」
一虎の声が少し沈む。
この部屋に来て以来、一虎は他の男の子の名前を口にするとこういう反応になる。
不安の混じった顔で、少し寂しそうにする一虎をゆっくり抱きしめる。
「……一虎、大好き」
「っ……うん、俺もすっげぇ好き」
嬉しそうな声で私の背に手を回す一虎を抱きしめるけど、どうしてこんなに悲しい気持ちになるんだろう。
「、どうしたの? 泣いてる」
「へへ、何でかな……よく、分からないやっ……」
涙を流す私を慰めるみたいに、目元にキスをする。