第3章 嫉妬、執着、重い×想い=愛(オモイアイ)
黒目がちな濁りのない、まっすぐな視線が私を捉えている。
「私、一虎君が好き」
やっぱり。分かっていたとはいえ、直接聞かされてしまうと、気持ちと肌がザワついてしまう。
「さんて、施設育ちなんだよね? 申し訳ないけど、そんな人が一虎君を幸せに出来るとは思えないんだ。それに、私一年の時からずっと彼を好きだったのに、突然現れた貴女に横から邪魔されて。ちょっと可愛いからって、調子に乗らないで。正直、私貴女が嫌いだし、邪魔なのよ。私から一虎君を取らないでっ! 一虎君の前から消えてよっ!」
こんな所で施設育ちを責められ、邪魔だの嫌いだのと言われるなんて、夢にも思わなかった。
ただ、彼女が言いたい事も分からなくないから、胸がぎゅっとなって手で制服の胸元を握り締める。
確かに、私なんかといて一虎が幸せになれるのかと言われたら、私も疑問で、自信なんてなくて。
やっぱり私は、彼の傍にいるべきではないのかもしれないなんて思い始めていたりする。
昔、施設で言われた事を思い出す。
“お前等みたいな人間は、誰にも必要とされない。誰かの特別になれるだなんて、間違っても思うな”
今更、そんな言葉が頭を支配して、私は笑ってしまう。
そうだ。私は一体何を考えていたんだろう。
一虎が優しいから、それに甘えて勘違いしていたんだと、それなら私が身を引くのが懸命なんだと思えてきて、半ば投げやりな気持ちになってくる。
そこから、私は図書室へ戻る間の記憶は全くなくて、気づいたら場地に抱きついていた。
場地は何も言わず、背を撫でてくれていた。
目からは、涙が止めどなく溢れている。
「は? お前等、何やってんの?」
一虎の声がしたけど、私は場地から離れようという気がしなくて、場地に抱きついたまま一虎へ言葉を投げた。
「一虎、やっぱり私、一虎と付き合うのやめたい」
「あ? 何それ」
「別れて」
「突然んな事言われて、分かったなんて言うわけないじゃん」
一虎の足音が近づいて来る。
お願いだから、これ以上私の気持ちを揺らさないで。
私の願いも虚しく、一虎に手首を掴まれて場地から引き剥がされた。
初めて目が合う。一虎の目が、今まで見た事がないくらい闇に染まっているみたいに感じて、怖気付く。