第2章 その感情は
しかも、私はバイトをしているわけでもないから、そこまでたくさんお金があるわけでもない。
「ねぇ、不良って何が好きなの? 不良っぽいものって何よ」
場地に一虎が何を好きなのか聞いたら「不良っぽいもんとか言ってた気がすんな」と、凄く難しい事を言われた。
「こんなんどうだ?」
場地が指差したのは、細長い革製のストラップとチェーンが連なったキーホルダーだった。
そんなに高くもないし、バイクや家の鍵に付けるのもいいと想像出来たから、それに決めた。
「なかなかいいセンスしてるね、場地」
「まーな」
ドヤ顔の場地に苦笑して、私は綺麗にラッピングされたプレゼントの入った紙袋を見てニヤけそうになる頬を、きゅっと引き締めた。
「楽しそうじゃん……二人でデート?」
背後から聞こえた声に、必要以上に驚いてしまって、勢いよくそちらに振り返る。
声には感情がなくて、笑っているはずなのに、ゾワリとする笑みを浮かべた一虎がそこにいて。
私は咄嗟に紙袋を後ろに隠した。
「図書室でも楽しそうにしてたし、二人は……付き合ってんの?」
「はぁ? お前、何つまんねぇ事言ってんだよ……」
場地の言葉に一虎の笑みが、一気に消えて真顔になる。
「つまんねぇ? 何がつまんねぇんだよ……」
よく分からないけど、マズい雰囲気なのだけは分かる。
二人が睨み合う中、場地の後ろに隠れる私にふと一虎の視線が向けられた。
光のない目が私を捕らえる。
「何にキレてんのか知らねぇけど、意味分かんねぇ事言ってつっかかんな」
「あ?」
場地の言葉に、一虎の眉間に皺が寄る。
「一虎も場地もやめよ? ほら、ここ道の真ん中だしっ……痛っ……」
一虎が私の止める為に出した手首を掴む。強く掴まれた痛みに、顔が歪む。
「誰のせいでこうなったと思ってんの?」
「おい、一虎っ!」
「うるせぇよ……テメェは黙ってろよ」
「女に乱暴すんじゃねぇ」
私の手首を掴む一虎の手首を場地が掴む。
どう考えても、この状況はよくない。
「場地、ありがと。私、大丈夫だから」
「ああ? 大丈夫なわけねぇだろ」
「場地、お願い」
私がまっすぐ見つめて言うと、場地は仕方ないと言ったようにため息を吐いて、手を離す。