第6章 *・゚・レインシューズはいらない*・゚*【岩泉一】
「やあ、はじ、めぇ」
「ココ、好きなのは変わってねぇのな」
ずるいと思う。
私も一の着ているシャツをすべて剥ぎ取ってしまいたい。少しくらい、一も私に照れた挙動を晒してほしい。
思うのに、私は懸命に一のシャツを握り締めることしかできないでいるのがまた悔しい。
「がっつくけど、許せよ」
「っ、あっ!」
一度絶頂を迎えた私の背後から、一は硬くなったそれで一気に秘部のナカを満たした。
「はじめ···ぇっ、好き···ぃっ」
「だったらもう、二度と離れんじゃねえ···っ」
「ん······ぅっ」
ふと視線を上げた先、鏡の中に湯気をまとった不恰好な自分の姿が朧に形を成していた。
思うように立っていられず爪を立てると、滑った指先であらわになった、決して綺麗とは言えない私が鮮明に映し出される。
けれどもう、目を逸らすことも、手を離すこともしないから。
それごと丸めて包み込み、力強く拳を握る。
「寧々······っ」
「はじめ······っ」
何度も互いを呼び合いながら、私たちは熱気に包まれたまま果てた。
「で、どうすんだよこれ」
「一が私まで引きずり込むから」
理性を取り戻したふたりに降りかかる現実は生ぬるい後始末である。
髪や制服をきつく絞って私が先に脱衣所へ出た。
なにせ下着までびしょ濡れなのだ。
私は自宅だからまだいいけれど、さすがに一をこのままでは帰せない。
「乾燥機かけるから全部脱いで。服はパパの貸すね」
「いや、バッグん中にTシャツとジャージ入ってっから」
「あ、そうなんだ。じゃあ取ってくる」
「悪い」
一が浴室で身体を拭いている間、私は洗濯機へ制服を入れ、大きなタオルを翻し、速やかに玄関に向かった。
置きっぱなしになっていたスポーツバッグを脱衣所へ運び、部屋にいることを告げその場から離れる。
一が躊躇いもなく返事をしてくれたことが嬉しかった。まだ私の部屋の場所を覚えていてくれているのだと。
制服が乾くまでどれくらいかな。
そうだ、部屋が少し散らかっていたから片付けなくちゃ。