第6章 *・゚・レインシューズはいらない*・゚*【岩泉一】
本当は、逃げ出したことをどこかでずっと後悔していた。
一のそばにいられないことのほうが、ずっとずっと苦しいってことに気がついたから。
「私も、······一が好き」
「······雨で聞こえねぇよ」
一の吐息が耳を掠める。
聞こえなかったなんて、絶対嘘に決まってる。
確かに雨音は傘の中まで響くけど、一時に比べたら小降りだし、一の声はちゃんと私に届いたもん。
こういう一の少しだけ意地悪なところも、相変わらずだ。
すう…と深く息を吸う。
そうやって一がとぼけてみせるなら、私は世界中にだって聞こえる声で、言っちゃうんだから。
「一が大好きっ」
ちょっとだけ得意げに笑顔で一を見上げると、一は面食らった様子でまばたきを繰り返し、数秒後、「恥ずかしいやつ···」と言ってはにかむような笑みをこぼした。
❋
制服を着たたままのふたりに熱い雨が降り注ぐ。
荷物と靴下を玄関に置いて向かった先は、私の家の浴室だった。
家族の帰りはいつも遅い。いけない娘でごめんねと、先に心の中でパパとママに謝っておく。
「っ、はじ···め」
「悪い、やっぱ抑え効かねぇ」
「ん······っ」
シャワーのお湯が制服を重くする。
髪の毛からしたる水滴が視界を遮り、私は口の中に広がる一の味だけをひたすら求めた。
「······びっしゃびしゃの制服から透ける肌ってやべぇエロいな」
「一、こそ······っ」
久々の私には刺激が強すぎて目に毒だ。
一の着るシャツと素肌にはもう余裕なんてなくなっていて、筋肉質な体の線と胸もとが瞳を潰しにやってくる。
駄目。恥ずかしくて見てられない。一の体が綺麗すぎる。これは、ある意味裸体よりもエロティックかもしれない。
「······っ」
一の舌が首筋から肩にかけての道をなぞった。
シャワーの水滴が体のどこを伝っても、一の唇の感触には敵わない。
「ひゃ、ぁ」
ブラのホックが弾かれる。
有無を言わさず胸の突起を舐め上げられると、息つく間もなく太い指が秘部のナカを埋めつくす。