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ゆりかごに甘噛み (R18)

第7章 ガラス玉にキスをするのは僕じゃなくても【赤葦京治】



 空になったラムネの瓶を水平線へ向けて翳した。

 ガラス玉と重なる空際。
 屈折した世界もそれほど悪くはないものだ。


 出逢ってから、これまでずっと。


 寧々さんに、恋をしていた。


 それを誰に打ち明けることはなくても。



「赤葦ーっ、ちょっと海に入ってかない?」

「ええ?」



 戻ってきた途端に寧々さんがまた奔放なことを言っている。先ほどの涙からは一転。子供のように無邪気な笑顔で。



「俺はいいです」

「ダメ、先輩命令」

「んな無茶苦茶な」

「せっかく来たんだしはしゃごうよ。青春だよ?」

「はしゃぐとか俺そんなキャラじゃないんで」



 結局は押し負かされた形となって波打ち際まで行くことになった。
 腕を引く力はそれほど強くはないが抗えない。面倒だ……と思いながら彼女と一緒に渋々と堤防を下りてゆく。

 青々と並んだ二つの瓶が、ふと視界の隅で街にさらさらと熔けていくような気がした。

 酷熱に弾かれて揺れる光。
 彼女の隣にいられた時間をもう一度記憶に刻んで瞳を綴じた。



 瓶の中のガラス玉と共に。













             * F i n *




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