第5章 *・゚・つかんだ飛沫は七色の*・゚*【二口堅治】
「まだ、寧々ちゃんから聞いてない。俺のことどう思ってんのか」
「っ、あ」
胸に触れた指の動きに背中が浮いた。Tシャツの上から、下着の中の膨らみに彼の指のがクニクニと擦れる。
「っ、やぁ」
「へ~、寧々ちゃんココ、弱いんだ? 俺のTシャツ越しにくっきりと浮き出てる」
「二口く、だめ」
「ね、俺のこと、好き?」
「ん、っき」
「聞こえないっすよ~、せんせい」
さっきのあの可愛らしさは一体なんだったのかと問いかけてやりたい。
二口くんの生意気加減がこれでもかも言わんばかりに上昇する。
微笑む唇の隙間からちろりと覗く舌先は、憎らしくも愛くるしい薄紅。
「っき、すき…っ、二口くんが好き…っ」
タガが外れてバラバラと木片の開く音がした。
溢れるものと押し寄せてくるものに襲われて、飲み込まれそうになりながら息を吐き出し思う。怖い、と。
その曖昧な紅が怖い。
いずれこの手で蝕んでしまうかもしれない。
それでも思う。
欲しい、と。
その蠱惑的な紅が欲しい。
密やかでは満たされない。
見ているだけなんて、もう嫌だ。
「やっと、聞けた」
「あ、んっ」
「こっちはとっくに俺のこと大好きだって言ってるけどねー?」
ピリ…とした音と感触で、ストッキングが破かれたと知る。薄手で通気性の良い夏用のものだからなのか、太ももに擦れた破れ心地は軽く感じた。
「やっべ、寧々ちゃんトロットロ……。いつからこんなんなってたんだよ」
「ひゃ、つ」
「ぁーあ、一気に二本入っちゃったし…」
「や、だ、め……っ」
抵抗を見せてもナカで遊ぶ指は止まらない。
強気な瞳は、私の甘い吐息を見抜いている。
「大丈夫だから、イケよ、寧々ちゃん」
決定打となった声に押し上げられて登り詰めた絶頂は、どこまでも『無』だ。
在るのは光。
天井にへばりつく蛍光灯が、あまりにも眩しい。