第1章 束ねて 【不死川実弥】
正面の窓は広く、外光は差し込むが直射日光は当たらないため光の加減がちょうどいい。
より陽光具合を調整できるようブラインドがついていて、それを閉め切り、暖色のダウンライトを少しだけ灯しながら眠るのが、実弥のお気に入りでもあった。
「今日はたまたま予約が入ってなかったから良かったけど、そう頻繁には寝かせてあげられないよ?」
「わぁってるって。その辺はちゃんとわきまえてっから安心しろォ」
「!」
コツン、と小突かれたひたいに手を添え、寧々は実弥を見上げながら微笑んだ。
恋人同士になって、そろそろ二年になる。
はじめの一年こそ秘密で交際していたのだが、その後美術教師の宇髄天元に勘づかれ、今では教師たちの間でのみ公認の仲となっている。
とはいえ生徒たちに示しがつかないのはいけない。そのため校内では必要以上に接触しないよう注意を払って生活している。
「一応出ていくときも生徒たちがいないか確認してね。ここ (カウンセリングルーム) は別棟で人通りも少ないから大丈夫だとは思うけど」
「なァ、カウンセリングってよぉ、生徒だけのモンじゃねェんだろ?」
「うん、そうだね。先生たちや生徒さんの保護者にも対応できるようにはしてるよ。まあこの学園の先生をカウンセリングしたことは一度もないんだけどね」
「···だろうなァ」
「タフネスな方たちばかりだもんね。本当に感心しちゃう」
「教師も利用可能なら、ここへの出入りを生徒に目撃されようが問題ねぇんじゃねェのかぁ?」
「···えええ?」
「ンだよその声はァ」
この人は本気でそんなことを言っているのか? と寧々は思う。
この学園に通う子たちは、みんな個性的だ。
校則は厳しい一面もあるものの、生徒は自由でのびのびしている子が多く、みんなそんな校風に憧れてキメツ学園に入学してくる。