第3章 *・゚・ゆりかごに甘噛み *・゚*【真島】
目覚めると真島はいなくなっていた。
寝転びながら手をさ迷わせ、掴んだスマホの画面を見ると夜の十時を回っている。
ベッド脇に、真島の着ていたスウェットとTシャツが脱ぎ捨てられていた。
楽な服ねぇの? と言われて買った、真島専用の部屋着。
月に一度ふらりとやってくるだけの男のために···とは思いつつ、けっきょくはそれをしてやることで利他の心を満たしたかっただけの利己心。
真島はいつもの服装に着替えてどこかへ帰っていったのだろう。
喉がひどく乾いてキッチンへ向かう。スタンドライトのほのかな光が灯るだけの部屋に、ガラスコップに水を注ぎ入れる涼やかな音が響いた。
コップを手に引き返してゆく途中、ふと、ローテーブルの上に黒い鉄の塊のようなものが置かれていたのが目についた。
「なにこれ···え、おもちゃ?」
拳銃が、一丁。
やけにリアルだった。というか、本物の拳銃なんて映像でしか見たことがないからわからない。
おもちゃのような気もするし、けれど持ってみるとけっこう重くて、いやおもちゃってもっと軽いものな気がするんだけど···なんてまじまじと回し見る。
ローテーブルには、一枚の紙切れが折り畳まれて置かれていた。
中途半端に開いた箇所から、英単語の文字の一部が覗いている。
今時紙切れに伝言とか。
デジカル化が主流となったこのご時世、律儀にペンを握って書き残していった真島を思うと、あいつも悪い奴じゃないんだよなあと思ったりする。
なんだけど、良い奴かどうかは、なんとも言えない。
「? なにが言いたいのよ······」
紙切れには、果てる間際、真島から鼓膜へ流し込まれた一言がそっくりそのまま綴られていた。