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ゆりかごに甘噛み (R18)

第3章 *・゚・ゆりかごに甘噛み *・゚*【真島】



 炒め終えたライスは楕円形に皿に盛り、薄焼き玉子で被せて包む。
 トッピングは青ネギと、棚の奥に眠っていた海苔を手で雑にちぎって適当に散らす。
 加えて大根おろしとか大葉とか、キムチなんかもあればなお良いらしいとレシピにはあるけれど、家にそんなたいそうなものはないので今回はしかたない。



「オムライスにポン酢だ? お前正気か?」

「レシピにちゃんと載ってるんだし大丈夫でしょ。評価も高いよ?」



 真島は食べるのか微妙な返答だったので、大きめのウッドプレートに1.5人分ほどの量を盛り付けて、ローテーブルまで運んだ。

 真島が食べるのならこれを二人で食べればいいし、食べなくても今のわたしなら1.5人分なんてぺろりだ。



「ポン酢はかけすぎないほうがいいんだって」

「ふうん」



 真島はパソコン用チェアーに深く腰掛け、スマホをいじりながら興味なさそうに相槌を打つ。

 わたしは構わずポン酢をかけて、オムライスを口に運んだ。



「うわ、美味しい」



 真島の横目がちらりとこちらに流れたのがわかった。別にひけらかしたくて口に出したわけじゃない。本当に美味しくて、思わず漏れてしまった感嘆だった。

 真島もそれは察したようで、「真島も食べたら?」と今一度勧めると、意外にも「ああ」と即答した。

 ひとつしかない使用済みのスプーンを真島に渡せば、真島も別段躊躇わず同じスプーンにかぶりつく。



「へえ···思ったより悪くねぇかもな」



 素直じゃない言い方だ。とはいえその後も続けて何口が食べてくれたので、わりと気に入ったとみた。

 わたしもケチャップオムライスより、この和風オムライスのほうが好みかもしれない。

 手間もかからないし、これから自炊の定番としてマイメニューに加えよう。



「お前、仕事はじめんの?」
 
「ああ···それね。まあそろそろなんかしないとなとは思ってるけど」



 床に転がる求人雑誌に目を向けて、わたしはやる気のない声で答えた。



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