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ゆりかごに甘噛み (R18)

第2章 *・゚・夜を結う*・゚*【不死川実弥】






「やっぱり終電間に合わなかった···」



 くたりとソファに横たわったまま、寧々は目を閉じ眉間に無念のしわを作った。



「泊まってちまえばいいじゃねぇか」

「···明日同じ服で出勤するのは嫌だなあ」

「あー···。宇髄あたりが絡んでこねェとも言えねェ···」

「実弥くん、車で送って···?」

「そうすっかァ···。酒飲まずにいて正解だなァ」

「疲れてるのにごめんね」

「謝るこたァねぇだろォ。引き止めちまったのは俺じゃねぇか」

「あ、後片付けも中途半端···」

「後で俺がやっから問題ねェよ」



 実弥の声が心地よかった。
 帰る準備をしなければとわかってるのに、ブランケットにくるまっていると、このままソファの上で寝てしまいそうになる。



「···寧々ー、帰るっつぅなら早く服着ちまえよォ、風邪引くぞォ」



 実弥がすぐそばまでやってきて、まるで子供をなだめるようにペチペチと優しく頬を張る。

 眠い目をこすりつつ着替えを終えると、最後の仕上げでもするごとく、実弥はなにも言わずに寧々の髪を手ぐしで整え、あくびで目尻に滲んだ涙を親指で優しく拭い取った。

 手のひらでポンと弾かれた後頭部は、よし、行くぞ。という合図。


 出逢ってから、これまでずっと。


 実弥の、言葉ではない優しさに、何度胸が鳴いただろう。






 ───わたしはこのひとが大好きだ。














      *



「ふふ」

「なんだァ突然」

「ううん。ちょっと玄弥くんのこと思い出しちゃって。相変わらずわたしとはあまり目を合わせてくれなかったね」

「あァ、おはぎ届けに来たときかァ」



 走行する車の助手席で、等間隔に並ぶ街路樹を流し見ながら、寧々は頬を綻ばせた。



「昨年はすごくびっくりさせちゃったけど、今年もやっぱりびっくりしてた」

「照れくせぇんだろォ。ありゃ思春期特有のモンだなァ···。そろそろ落ち着いてくれりゃいいんだが···。さすがにあのまんまじゃァ将来が不安だぜぇ」


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