第2章 *・゚・夜を結う*・゚*【不死川実弥】
「え、え、嘘でしょ実弥くん。わたしこの二年お泊まりするときは絶対に特別な下着つけてたのに」
「ンなもん毎度まじまじ見てねェしなァ。脱がすときゃ大抵薄暗れぇ中だしよォ」
ガーン、という擬音が寧々の頭上に落ちてくる。
確かに、『実弥にそれを見てもらいたい』という理由で週末ランジェリーを身に着けているのかと言われたら、違う。
どちらかといえば、洋服を綺麗に着るため。脱いだとき、下着の相乗効果で少しでも自分の体が実弥の目に綺麗に映ればいいなという期待が大きい。
ではなぜ今日に限って某リーズナブルブランドの楽チンなアンダーウエアになったのか。
『恋人の誕生日に勝負下着をつけないでどうする!』
着飾ることに余念のない、学生時代の友の声が脳内に響く。
言い訳になるかもしれないが、今夜は本当に一緒に過ごせるのか微妙なところだったのだ。
平日はお互い忙しいから会うのは大抵週末だし、プレゼントは一応持参していたものの、渡すのは週末になるかもしれないとも念頭に置いていた。
昼間、実弥からの誘いに舞い上り、「もちろんそのつもりだよ」などと答えてしまったわけなのだが、朝、下着を身につけるときに夜の事情までは配慮していなかった。
平日の、まだ週のはじめの火曜日ということもあり、なるべく体に負荷のかからない楽チンな下着をつけていきたいという欲にも負けた。
あえてこれ幸いというならば、色がベビーピンクのものであることくらいだ。
「今日のやつも変じゃねェと思うぜェ」
「そりゃ、変ではないけど、可愛くはないよ」
「お前が着てりゃあどんなモンでも上玉だァ」
「···プ○キュアの綿パンツでも?」
「······上等じゃねェかァ」
「ちょ、やだ。ふふ、くすぐったい」
実弥のひたいが寧々のひたいにぐりぐりと押し付けられる。
ふわふわの銀髪に顔回りを撫でられて、思わず瞳が細くなる。