第2章 *・゚・夜を結う*・゚*【不死川実弥】
「実弥くんまって、片付け、お皿洗わせて···っ」
「ンなもんはあとでまとめて俺がやるよォ」
「っ、実弥くん、疲れてる、でしょ?」
「寧々を抱く体力ぐれェは残ってっから問題ねェ」
「~~、でも···っ」
食後、テーブルの上の食器を片してしたはずの寧々は、いつの間にかソファの上に仰向けに寝かされていた。
L字型のカウチソファ。
家族が全員でやって来てもくつろげる大型のタイプのもので、飲み物などをこぼしても不都合のないよう黒の合皮を選ぶあたりに実弥らしい心遣いが伺える。
寧々の手作りパスタをディナーに、不死川家特製のおはぎとパステリー粂野のケーキをデザートで堪能したあと、寧々がプレゼントした手帳カバーをさっそく交換してくると言ってリビングから出て行ったところまではよかった。
が、戻ってきたときにはなぜか実弥にスイッチが入っていた。
「···今日はしたくねェか」
ぽつりと呟いた実弥の吐息に、首筋がくすぐられる。
少し寂しげな声でささやく実弥は"恋人たらし"だと思う。
それも、計算ではなく天然で、寧々をたらし込んでしまう。
「したくないというか、わたし、今日はそういうつもりじゃなかったから、下着が」
「···下着ィ?」
埋めていた顔をあげ、実弥は寧々の眼前で眉をひそめた。
「その、いつもの感じと、違うっていうか」
一呼吸の間を置き、実弥は寧々の着ているケーブルニットを腹の下からぐっと上へ押し上げた。
「っ、きゃーーーッ!」
驚いて、寧々も強引にニットを上から押さえ込む。
「な、な」
「違うって、なにがだぁ」
「え、だから、いや違うでしょどう見ても。いつもはもっとレースとかにも凝ったデザインの可愛いものだけど、今日のはなにもついてないツルッとした」
寧々が必死に説明する傍らで、実弥は斜め上を仰いで思い出す仕草をしてみせる。