第3章 月島軍曹と網走監獄
「鯉登少尉は、後方で大尉殿をお守りしてください!
大尉、少尉から離れないでください!」
網走監獄襲撃は、とにかく凄いとしか言いようがなかった
看守達がマキシム機関銃で応戦してきても何のその、月島軍曹の手投げ弾一つで戦況をひっくり返してしまった
初めだけ旗手をしていた時の事を思い出す
第七師団は、第一師団にも負けず劣らずだな、等と思う
途中で杉元に会うも、緊迫ぶりに声もかけられなかった
「(佐一も来てるのか……
死なないで、佐一)」
二階堂一等兵の杉元への殺意に、彼の無事を祈らずにはいられなかった
「恭子どん、こっちへ!」
囚人達の迎撃中、鯉登少尉が囚人達から逃がすため呼ぶ
「分かった!」
建物から出ていくと、後ろで機関銃の音がした
「音、月島軍曹は!?」
「月島は多分中じゃ!
あんわろなら大丈夫じゃ!」
「月島……」
月島軍曹を迎えに行こうと踵を返すと、鯉登少尉に肩を強く掴まれた
鯉登少尉にそのまま離れるように促されるが、拒否した
どれくらい待っただろうか
血塗れの鶴見中尉と月島軍曹が出てきた
「月島軍曹!!」
駆け寄り、服を鷲掴む
無表情な中にもかなりの疲労が見て取れた
「怪我は!?
血まみれじゃない!」
「大尉殿…大丈夫です、返り血です
貴方こそお怪我はありませんか?」
「私は大丈夫」
「それは良かったです
さあ、貴女は鯉登少尉の所へ」
月島軍曹に押され、鯉登少尉のもとへ戻される
鶴見中尉は歩を進め、そのままそこに居る全員が着いていくことになった
「のっぺら坊を探しに行くぞ」
結果から言うと、のっぺら坊は一応見付かった
見付かったのだが、死んでいた
杉元佐一の隣で
「佐一、佐一!!」
杉元を抱く
頭を撃たれており、意識はなかった
鶴見中尉が隣にしゃがみこみ、杉元の心拍を確認する
「まだ生きている」
「どうしよう、杉元が死んじゃう!」
「うちで治療しましょう、コイツは利用価値がある」
「わかった、すぐに行こう!」
火事場の馬鹿力とはよく言ったものだ
杉元をそのまま横抱きで持ち上げる
頭を心臓よりも下にしないように、と注意まで出来た
兵士達は大変驚いていた
しかし大尉は、目もくれずに杉元を運ぶ
彼女を見つめている兵士の中には、月島もいた