第3章 月島軍曹と網走監獄
旭川
「こちらが報告書です
よろしくお願いいたします」
「ああ、ありがとう」
月島軍曹が活動報告書を持ってきた
先日恋心などと言うものを自覚してしまった私は、照れてしまい目が合わせ辛かった
お茶を入れに行くふりをして、二人で尉官室を抜け出し二人きりになる
「日にちが空いたが、何か進捗でもあったのか?」
「よくお気付きになられましたね
あれから一枚増えました」
「そうか、良かったな」
「お陰様で
夕張での正体を隠す所からヒントを得て成功いたしました」
「ほー、それは良かった
一般人になりきったのは月島軍曹か?」
「ええ
賭場狂いの男になり、有り金全てすりましたよ」
「ははは、元の性格からは想像できないな」
賭け事に狂って負けそうな男と言えば、白石が思い浮かんだ
競馬で大損して地べたに寝転ぶ彼を想像する
それを月島軍曹に置き換えてみるとあまりにあり得なくて、おかしさにくすくすと笑いが込み上げてきた
月島軍曹が不思議そうにこちらを見たので、月島軍曹の事を考えていたとバレないように、なんでもない、と首をふる
「ところで鯉登少尉は元気か?」
「………、鯉登少尉ですか?」
「うん、ずっと旭川にいたがそっちに異動したからどうしてるかと思って」
「まあ、お元気のようですが
……気になりますか」
「鯉登少尉とは仲良くなったしな、普通に気になるが?」
「そうですか……」
「?」
急に月島軍曹の態度が変わった気がするが、理由がわからなかった
「月島軍曹はこの後どうす「戻ります」
「……あ、そう」
「そうだ、◯月◯日に鶴見中尉とお迎えに上がります
和田大尉殿の御力をお借りしたい事がございまして」
二人きりなのに名字で呼ばれた
先日約束したばかりなのに、とむっとする
「……………」
「和田大尉殿、どうされましたか?」
「ゆめ」
「……………、失礼致しました」
月島軍曹は、軍帽を深く被り直した
「ゆめ大尉殿」
月島軍曹の声が自分の名前を呼ぶ、それだけで胸がいっぱいになった
「うむ!」
「私が何とお話ししたか、聞いてくださってましたか?」
「あ、何だっけ」
月島軍曹が大きく溜め息をついた