第2章 月島軍曹と刺青人皮
「着きましたよ、大尉」
「よし始めましょうか、基さん」
夜中に二人で大きなスコップを持ち、炭鉱事故の共同墓地に来た
ここに噂の刺青人皮があれば、大当たりである
「うぅ~、真夜中のお墓怖いよぉ
お化けが出る前に早く終わらせたい」
「幽霊なんて迷信ですよ
ところで先程も名前で呼んでらしたのですが、いつまで夫婦役を続けるおつもりですか?」
二人とも土を掘る手は止めずに話し続ける
「えーと……
夕張視察が終わるまで
い、家に帰るまでが視察だからな!」
「かしこまりました……
誰かに見られるとまずいからな、早くやってしまおう、ゆめさん」
「~~~っ!!」
突然の名前呼びに、耳がこそばゆくなる
月島軍曹は、表情ひとつ変えずに土を掘り続けている
「さ、さっきのだけど……助けてくれてありがとう、基さん」
「夫として当然のことをしたまでですよ」
「おっ……!!」
夫と言う言葉に、不覚にも照れてしまう
「いやーそれにしても、良く私が絡まれていると分かりましたね、基さん」
「良い夫と言うのは、嫁さんから目を離さないものなのでしょう?」
「(いやそれ、私が昼間に言ったやつ!ズルい!!)」
「あ」
「何!?」
「何かに当たりました
恐らく死体です」
「ひぇっ!」
「ここからは私が確認しますので、どうぞ大尉殿は明かりで手元を灯してください」
「わ、わかった」
墓荒らしという罰当たりな行為をしていることを改めて思い知らされる
月島軍曹は静かに進めていった
さあ死体のお出ましだ、とごくりと喉を鳴らす
「「あれ」」
しかし、現実とは小説より奇なり
なんと墓は先に暴かれており、死体はまるごと無くなっていた