第2章 月島軍曹と刺青人皮
第七師団小樽支部 尉官室
「和田大尉殿、頼みがあります」
「何だ?鶴見中尉」
報告書作成のために小樽に来ると、待ってましたとばかりに鶴見中尉が話しかけてきた
「素敵な緑のリボンを着けておいでですな
いやはや、美人は何をつけても良く似合う」
「おべっかは良いから早く言え」
「本音ですよ、はは
……刺青人皮を探し初めて早数ヵ月になりますが、全く手がかりすら掴めませんでな
困っております」
「あー、まだ一枚だもんな
少なくとも佐一…杉元が二枚集めてる事は分かってるんだったか?」
「そうなのです
先日のシャチの男が脱獄囚だとすると、二枚目になります
我々も各地に兵をやってるのですがなぁ」
正しくは白石含む三枚目だが、二人は白石を認識できていないため、知るよしもない
「二枚とは限らんしなぁ……」
「そう!
実はもう二十三枚集め、暗号が解かれている可能性も……!!」
「まぁそれは無いと思うが、あれじゃないのか?
アイヌの女の子と手を組んでいたんだろ?
それが功を奏しているんじゃないのか?
私が死刑囚なら、兵士を見つけた瞬間逃げるしな」
「素晴らしい考察!!」
鶴見中尉が大袈裟に手を叩いて賞賛する
「あ、頼みってそう言う感じ?」
「話が早くて助かります、大尉殿
それに、大尉殿が積極的に現場に出てくださいますと、杉元に出会う可能性も高くなりますぞ
そこでゆっくりお話をされるも良し」
鶴見中尉の整った顔が、にこりと微笑んだ
確かに杉元とは一度膝を向きあ合わせて話したい、と思っていた
網走監獄に収監かれるレベルのヤバい人間には、あまり自分から近付きたくはなかったが仕方ない
「いやまぁ良いけど……
メインにはできないぞ
仕事で連隊を見に行くついでとかなら……」
「それで構いません!」
「じゃあとりあえず今回は旭川に帰りがてら、中間地点の夕張かな?」
「月島を身辺警護につけましょう」