第2章 月島軍曹と刺青人皮
否定しようとするが、女将は言葉を被せてくる
「あんた、良かったねぇ」
「へ?」
「リボンを贈り物にする意味、知らないのかい?」
「いや、知りません
え、意味とかある感じ?」
大尉が月島軍曹の方を見る
「(意味?
そんなもん説明してないだろうが姉さん)」
「リボンはね、『貴女と良縁を結びたい…つまり結婚したい』って意味だよ
ちなみに緑色は、『貴女が心の居場所です』ってことさね」
「ちょっと待ってくれ!
俺たちはそう言う関係ではないと言っただろう!」
「やだよーもう、おばさん相手に誤魔化そうったってそうはいかないよ
お嬢ちゃんあんた、こんな風に良くしてくれる男は大事にしないといけないよ!
まぁ年はいってるし、背と鼻も低いけどね(笑)」
「あ、はい………」
言いたいことを言うと、嵐のように去っていった
「何だったんだ……
あの、和田大尉、そのリボンですが……」
「解ってるよ」
月島軍曹が彼女を見ると、耳まで真っ赤にして睨んできた
「月島軍曹みたいな女っ気のない男が、そんな洒落たことが出来る筈が無いもんな
どうせあのおばさんの口車に乗せられてこれを買ったんだろう」
「ま、まぁ………
一応、普段のお礼のつもりではありました」
「じゃあ、このリボンは返さないからな」
「はい
返されても俺は使い道がないんで、迷惑で無ければ貰ってください」
「うん…………
迷惑じゃあない、よ」
大尉は相変わらず耳まで真っ赤に染めながら、リボンを愛おしそうに見つめていた
それを見て月島軍曹の胸の奥が少し騒いだ
「(あ、この感じ……
その表情………)」
瞬間、フラッシュバックした
海の薄灰色がかった青色
崖の上に立つ若緑色
ふわふわの黒色
いとしげら、と伝えた時の可愛い耳の赤色
「(あの子には、こんなことさえしてやれなかったな……)」
あの子にも同じことをしてやれれば、こんな風に無邪気に
喜んだのだろうか、と考えると胸がちくりと傷んだ