第2章 月島軍曹と刺青人皮
なんとなく緑の色が目に止まった
「(彼女に似合うかは分からんが、緑は良い色だしな)」
女将がリボンをプレゼント用に包み、渡してくれる
「上手く行く事を祈ってるよ
1円50銭ね」
「上手く?」
女性の言葉に疑問符を浮かべるが、2円を渡す
ちらりと外を見ると、とっくに大尉が待っていた
待ちぼうけをしているような表情だ
そんなにこの店にいたのか
「しまった」
上司を待たせていたことに焦り、お釣りが合っているかも確認せずに慌てて出ていく
「あっちょっとお客さん!
まだ10銭渡せてないよ!」
「和田大尉殿!」
「あ、月島軍曹ぉ」
此方を見る顔は嬉しそうだった
良かった、気を害していないようだ
「着物屋に用事なんかあったのか?」
「あぁ、そうだ
これを貴方に差し上げようと思いまして」
包みを彼女に渡す
不思議そうにしながらも、両手で受け取った
「何これ?
開けて良い?」
「どうぞ」
彼女の細い指がリボンを摘まむ
頬に赤みがさした
「可愛い!」
「流行っていると聞いたのでそれにしました
お持ちでなければ良いのですが」
「持ってない持ってない!
わー、嬉しいなぁ」
本当に喜んでいるようで、胸を撫で下ろす
リボンを掴んだ手が、黒く艶やかな頭へ持っていかれた
「どう?似合うかな?」
えへへ、と照れながら笑う彼女に、口元が緩みそうになる
「ちょっと兵隊さーん!!」
「「?」」
二人で振り替えると、着物屋の女将が追いかけてきた
「お釣り!
もう、確認せずに出ていかれたら困るよ!」
「あ、すみません…」
「あらっ、その子があんたの良い人かい?」
「えっ」
「はっ!?
いや、違……」