第2章 月島軍曹と刺青人皮
旭川へ報告と監視を兼ねて到着してから暫くたった頃
旭川支部での業務も終わり、そろそろ鶴見中尉殿の元へ戻ろうかと考えていた時、いつものように二人で町を歩くとふと着物屋が目に入った
「(そう言えば、大尉殿には奢って貰ってばかりだな
上司で向こうから誘ってくるからとは言え、年上で男の俺が何もせんのも格好がつかんか?)」
「月島軍曹?
どうした?」
「すみません、和田大尉殿
買いたいものがありますので、少し待っていて貰うか先に帰って貰えますか?」
「うん、良いぞ
私もちょうど買いたいものがあったからな
お互い用事が終わったらここで待ち合わせしようか」
「かしこまりました
では少し失礼します」
彼女が小走りでどこかに行くのを見て、目の前の着物屋に入る
中には快活そうな中年女性が着物を整えていた
「いらっしゃい」
「すみません、女性に贈り物をしたいのですが」
「どうもどうも
うちは何でもありますよ
どんな女性ですか?」
「そうだな……
年は若くて、お転婆で気はキツいが、可愛らしい感じの……」
彼女の特徴を説明していると、女将はにやにやと笑いだした
「てっきりお気に入りの女郎かと思ったが、良い人かい」
「いや、そう言う関係ではないんですが……」
「あーあー、皆まで言わなくて良いよ
それならこの着物なんてどうだい?
隣で歩くと皆が振り向くような上物だよ!」
「いや、そこまで大きな物はちょっと……」
「あらそう
じゃあ、この辺りかね?
手鏡、紅……そうだ、こないだ東京から入ってきたばかりのリボンがあるよ
東京の女学生の間では、これを頭に巻くのが流行ってるのよ」
「りぼん、か」
女将が色とりどりのリボンを手に取る
これなら流行りだと言うし、簡単な贈り物なので向こうも気軽に受け取ってくれそうだ、等と月島軍曹は考えた
「これにしよう
色は………そうだな
その緑の色が良いな」