第2章 月島軍曹と刺青人皮
「ほう、洋琴とは珍しい」
「ようきん?」
「これの事です」
ニシン御殿に聞き込みに行き、中へ上がらせて貰っていた
鶴見中尉は現代で言うピアノを指差して説明する
「非常に効果なのに珍しいですなぁ
これ、ここを鍵盤と言い、押すと音が鳴ります」
ポロン、とピアノが綺麗な音をたてた
「へー、初めて見るなぁ」
「大尉殿は習い事等はされていなかったのですか?」
「お花とお茶は少ししたかな
でも女学校でも洋琴は習えなかったな
鶴見中尉は弾けるのか?」
「少しなら」
「聞きたいな、弾いてくれ」
「大尉殿のお願いとあらば、喜んで弾きましょうぞ」
鶴見中尉の長く綺麗な指が鍵盤を弾く
ゆめにな何の曲かは分かりかねたが、耳障りの良い音楽だった
「お上手ですな、鶴見さん!」
御殿の主人も感心していた
これをきっかけに二人の話が盛り上がる
鶴見中尉が投資をねだると、主人が奥からマキシマム機関銃を出してきた
「(なるほど、今回の目的はそっちもあるのか)」
刺青人皮が駄目でも、これだけの御殿を建てられる人物がお金をくれれば中尉のポケットマネーが潤う
いち連隊が自由に動かせるお金などたかが知れている
しかし個人で投資を募れば、色々と便利になるわけだ
「(旭川から武器弾薬を盗っていったようだが、中にはえらく古い武器もあったわけだ
こういう所で武器も含めた私財を増やしているわけか)」
スパイと分かっていながらこの現場を見せてくるところが、鶴見中尉に試されている気がしてならなかった
「(中央さえ困れば何でも良いので、言うつもりは毛頭無いですよー)」
その時、二階で銃声がした