第1章 🌱𓂃 𓈒
「わ、私は……」
突然の出来事に混乱する頭では、うまく考えがまとまらない。
思考のキャパシティはとっくにオーバーしていて、目が回りそうだ。
「……ごめんなさい!」
ユウリはおもわずそう叫ぶと、手を離して勢いよく走り出した。
「待ってくれ!」
ダンデの声が聞こえたが、ユウリは構わず走る。
(どうしよう、どうしよう!)
必死で足を動かしながら後悔しか出てこない。
(あんな逃げ方したら……もうダンデさんに会えないよ…)
ユウリは唇を噛み締めながら、自分の軽率さを悔やんでいた。
「はぁっ、はあっ……」
自宅のベッドの上で、ユウリは枕を抱きかかえて横たわる。
彼の真剣な目を思い出すと、胸がキュッと苦しくなった。
最初は揶揄われているのかと思った。
小さなカントー地方の田舎娘。
彼のような華やかな男性からすれば、逆に物珍しいのだろう。
けれど、あんな優しい人が、あんなからかい方ををするだろうか?
ダンデから向けられた突然の好意以上に、
ユウリは自分の中に芽生えた感情に戸惑っているのだ。
(なんでこんな気持ちになるんだろう……)
今まで感じたことのないような胸の高鳴り。
そして、その鼓動に合わせて湧き上がる寂しさのようなモヤ。
キズを持ったように心が痛い。
(この症状は…知ってる…薬の効かない、厄介な…)
恋煩いだ。
(これが、……恋なんだ)
生まれて初めて感じる痛みを、ユウリはじっと耐えるように抱え込んだ。