第4章 🌵
プラターヌを見送った彼女は、ぼんやりと彼の消えた方角を見つめていたのだが、突然腕を掴まれ、引っ張られる。
「きゃっ!」
バランスを崩すと、腕を引っ張った人物の腕の中に倒れ込んだ。
見上げると、ダンデが口元だけ微笑んでいる。
「だ、ダンデさん!?」
驚いていると、ダンデが口を開く。
「…やあ、ユウリ
随分と楽しそうだったな」
「えっと、どうしてここに……」
「たまたま通りかかっただけだよ。……それで?何を話していたんだい?」
ダンデはユウリを抱きしめたまま、質問をする。
その目が笑っていないことにユウリは気付き、ゾワッと背中が寒くなるのを自覚した。
「あの……それは……」
「言えないような内容なのか?」
ダンデはユウリの耳元に顔を近づけると囁くように言う。
その声は普段より低く、どこか怒りを含んでいる気がした。
「そ、そんなことは……ただ、仕事の話をしていただけです」
まだ参加予定のない研究内容だ…守秘義務があるわけでもないが、ここで言うのは憚られる。
ユウリはそう判断すると、「誰かに見られちゃいますよ」とダンデの胸を軽く押し返そうとしたが、彼はビクともせず、逆に余計に抱き寄せられてしまった。
「俺に秘密を持つなんて、悪い子だ」
「あっ……」
ダンデはユウリの頬に触れるとそのまま滑らせた指で首の後ろを撫でる。
「ダンデさん…」
「今朝の約束は覚えているか?」
「約束…?」
「俺だけのものになるって約束」
「あ、はい。もちろんです…」
ユウリはダンデが何をいいたいのかわからず、首を捻った。
「君は俺のものだから……他の男と会うなんていけないな」
「あ……ごめんなさい」
「今日は仕事が終わったら俺の家に、住所は送っておくよ」
「はい」
ダンデの手のひらがゆっくりと腹の下を押す。
ちょうど子宮の上で何かを伝えるように触れられて、ユウリは恥ずかしくなった。
「きちんとわからせてやらないとな」
それだけ言い残して、ようやくダンデは離れていった。