第2章 戸惑い、揺れる
耳を疑う言葉に、開いた口が塞がらない。
「だからさ、は俺に譲って欲しいんだよね。とは言っても、の気持ちが最優先だけど」
また爽やかに笑う陽介に、私は何て言っていいのか分からなくて。
「へー……予想外」
感情のない声で半間が言って、私を見る。
「お前は、どうすんの?」
「と、突然そんな事言われても……分かんないよっ……」
「今すぐじゃなくていいから、ゆっくり考えてよ、ね?」
半間に臆する事なく、私だけを視界に入れて陽介は笑う。
陽介がいなくなった後、私は倉庫にいた。
「俺もお前気に入ってるし……そう簡単には、手放してやれねぇんだよ、なっ……はぁ……」
「んっ、あっ、あぁっ……」
埃っぽいマットに四つん這いになり、後ろから揺さぶられて喘ぐ。
いくらでも女がいる半間には、私がいなくてもいい。
気に入られていると言えど今だけだし、あの後輩みたいにか弱そうで小さくて、可愛らしい子の方がいいだろうし。
私も恋という不確かなものに、縋るのもいいかもしれない。
乱れを直して、半間に向き直る。
「私、陽介の事……考えてみようかな……」
一瞬ピタリと動きを止めた半間が、いつもの冷めた目でこちらを流し見る。
「半間も私にばっか構ってたら、他の子達逃げちゃうかもだし、私じゃなくたって、ほら、こないだの後輩みたいな子もいるしさ」
何で私はこんな必死になって話しているんだろう。
私は、何を期待しているんだろう。
止めて欲しいのだろうか。
だけど、半間は何も言わない。
何だかんだ言っても、やっぱり所詮セフレはセフレだ。
そして、やっぱり私は、母親にそっくりだ。ほんと、最悪。
倉庫から出ようと扉に手を掛けた私を扉と挟むように、半間の大きな体が後ろから包むみたいに立つ。
「半間、出れな……っ!?」
顔だけで後ろを見上げた瞬間、半間の顔が凄く近くにあって、考える間もなく私の唇は塞がれた。
何で、キスなんて。
今までどれだけ体を重ねても、キスなんてした事なんてなかったのに。
触れるだけのキスなのに、何時間もしているみたいな気分になる。
ゆっくり離れた唇が、妙に熱く疼いた。
「俺が飽きるまでは、お前は俺のだろ?」