第5章 そして恋人へ
やっぱり修二の口から“可愛い”という言葉が出るのが、似合わないというか違和感でしかなくて、妙に照れくさくなる。
私の微妙な顔が気になったのか、修二は私の上半身を抱きしめるみたいにして、耳元に唇を寄せて囁くみたいにまた“可愛い”と笑った。
腰から背中へゾクゾクとした感覚がせり上がり、無意識に中を締める。
小さく呻いた修二が、再び私の腰を次は先程より優しい手つきで支えるように持つ。
「首の後ろに手、回して」
首に抱きつくみたいな体勢で私が言われた通りにすると、修二の唇が私の唇に触れた。
「……好きだ……」
「ひっ……ぅっ、ンんんっ! ふっ……」
私の言葉を掻き消すように、食らいつくみたいなキスをしながら腰が動かされる。
喘ぎが全て修二のキスで塞がれ、消える。
それでも漏れる声が、修二との行為の激しさを物語るようで、それにまた興奮が高ぶった。
「ぁ、あぁっ、しゅ……激しっ、のっ、ダメっ……あんっ……ンっ、傷っ、広がっちゃっ、ぅ、からぁ……」
出来るだけ声が大きくならないように、片方の手の甲を唇に当てる。
「じゃ、傷開かねぇよーにっ、がしっかり動いてくれねぇとな……」
「あっ、ンんっ、ふっ、ひぅ……」
ゆるゆると動く修二に合わせるみたいに、分かる範囲で腰を動かす。
満足そうにこちらを見る修二を、恨めしい目で見ながらも、ぎこちない動きで何とか絶頂に向かって登りつめていく。
「しゅっ……ぅ、あぁっ……もっ……んっ……」
「手伝ってやる、からっ……イけっ……」
突然下から激しく突き上げられ、私はいとも簡単に達してしまった。
余裕な顔で、片方の口角を上げて笑う修二に体を預ける。
「休憩してる暇ねぇぞ」
耳元でクスクス笑う声がし、修二が動き始めた。
こうなってしまってはもう止まらない。私はなすすべもなくただ揺さぶられて、溺れるだけ。
好きとか愛してるとか、信じてなかった。
私達はこのままただ体だけで繋がって、どちらかに恋人が出来たり、関係に飽きたら離れていくんだと思っていた。
肌を合わせるのがこんなに安心出来るなんて知らなかった。
彼の甘い言葉の罠に、少しだけ身を委ねてみるのもいいかもしれない。
【完】