第2章 戸惑い、揺れる
体育の授業。
無駄に天気がいいのに、何でわざわざ走るのか。
グラウンドをダラダラ走る授業に、何の意味があるのかさっぱり分からない。
授業が終わり、たまたま近くにいたからと押し付けられた片付けをする為、体育倉庫へ向かう。
「さん、手伝うよ」
「あー……ありがとう」
隣に並んだクラスメイトの男子が、爽やかな笑顔を向ける。
あまり人に興味を持つ事がないから、名前は分からないけど、こんな漫画みたいな爽やかイケメンがいるんだと、ぼやっと考えていた。
「ちゃんと話すの初めてだよね?」
「うん、そうだね。えっと……」
「あー、やっぱり名前知らない感じ?」
苦笑した彼は、田辺陽介と名乗った。
「陽介でいいよ」
「じゃ、私もでいいよ」
なかなか好印象な彼は、凄く話しやすい。
「あのさ……嫌なら答えなくていいんだけど、半間君と……その、付き合ってたり、する?」
まさか、男子生徒からそんな事を聞かれるとは思わなかったから、一瞬持ってる物を落としそうになった。
半間だって、私とだけいるわけじゃないのに、どうしてこうなるのだろうか。
体育倉庫の前で、陽介と二人で見つめ合っている状況で、私は後ろから誰かに抱きつかれた。
微かにタバコの香りがして、誰だかすぐに分かった。というより、私にこんな事をするのは一人しかいない。
「何ー? 気になるかぁ?」
まるで自分は関係ないみたいな言い方で、半間が言った。
「あんた、何で……」
「たまたまお前見つけて、この出てる脚見てたら、ムラムラして来たから?」
言って、構わず私の脚を撫でる。
「ちょっ……」
「あ、やっぱり付き合ってたんだ」
「いーや」
「え?」
「ただの、セ・フ・レ」
明らかに楽しんでいる半間の言葉に、陽介も私も固まる。
「そうなんだ……びっくり」
これは、彼との友情は築けなくなったかなと考えていると、彼が意外な反応を見せた。
「半間君てモテるだろうし、他にもセフレいるよね? だったら、は手放してくれない?」
「あぁ?」
「よ、陽介?」
後ろで低い声がしたけど、それより今は陽介の言葉の意味の方が気になった。
「俺さ、前からの事気になってたんだよね」