第1章 歪なカンケイ
ただ、私を巻き込まないで欲しい。
「半間先輩って、彼女とか、好きな人とかいるんですかね?」
そんなの知らないし、興味もない。
何故みんな私に聞くのか。半間に聞いてくれたら楽だし、その方が早いだろうに。
ペラペラと話す女の子に、私は苛立ちを覚える。
「あのさ、私に言わずに半間に聞けば? 私は半間じゃないから、何も言ってあげらんないし、あんたらがどうこうとか興味ない」
一瞬言い過ぎたかと思ったけど、とにかく私はここから去りたくて、その子の横を通り過ぎようとした。
「女って怖ぇー。後輩泣かすなよー」
外に立って、窓から廊下に顔を出した半間が、楽しそうにこちらを見ている。
「知らないよ……。あんたが慰めてあげれば?」
本当に泣いてるのかは見えないけど、私には出来る事なんてないから、二人を残してその場から去った。
体育館裏に戻ると、各々寛いでいる三人の視線が一斉にこちらを見た。
「おかえりー」
「あれ? 半間君と会わなかった?」
私はさっきの出来事を言うのが億劫で、とりあえず「うん」とだけ言った。
「あ、半間」
「よぉ」
私と鉄太の間に腰を下ろして、こちらに目を向けた。
「さっきの子、あんたを好きなんじゃないの?」
「らしいな。付き合うのはダリィって言ったら、一回でいいから抱いてくれって言われた」
私達の会話を何気なく聞いていた三人が、食い付いて来た。
一虎なんて、ベンチに横になっていたのに飛び起きた。
「でも分かるわ。私も付き合えないなら、一回くらいって思うもん」
静が言うと、一虎が「マジかっ!?」と夢中だ。
「で? どうするんだ?」
鉄太の質問に、半間は空を仰いでいる。
「まぁ、気分が乗れば考えないでもねぇな」
本当に何処までも最低な男だ。
だからこそ、後腐れない今の関係が楽なんだけど。
「お前これで何人目だ?」
「さぁ、いちいち覚えてねぇ」
「何かかっけぇー」
鉄太の質問にダルそうに答えた半間に、一虎以外が一斉に呆れていた。
「安心しろよ。今のお気に入りはお前だから」
「は? 嬉しくないけど、どーも」
肩に手を回され、言われた言葉にため息が出る。
世界一嬉しくない言葉だ。
鳴ったチャイムと共に、私達は立ち上がった。