第1章 歪なカンケイ
不思議と怖さはなくて。
私は半間に近寄って、前にしゃがみ込む。
「血、凄いですね。大丈夫ですか? 怪我」
「んー。俺の血じゃねぇから、大丈夫ー」
口の端だけを上げて笑う半間に、少しドキリとした。
タバコを吸う姿が様になっていて、ついジッと見てしまう。
「お前、名前は?」
「名乗るならまず自分から」
私がそう言うと「ばはっ!」と独特な笑い方で笑い、またタバコを一吸いする。
「半間修二。そっちは?」
「。苗字で呼ばないで、嫌いだから」
名乗るのと同時に腰に手が回り、壁側にクルリと移動させられた。
壁と半間に挟まれて、上手く動けないから、やたらと身長が高い半間を見上げる。
「お前、いいなぁ……気に入った……」
「ちょっ……やっ……」
マフラーを剥ぎ取って、首筋に舌を這わせながら、スカートをたくし上げる。
「お前、エロい下着着けてんだな」
「何言ってんのっ!? い、いきなり初対面の女のお尻揉みながら、迫るとかっ……あんた、正気っ!?」
「ひひっ、声掛けたお前が悪ぃ……だろ?」
またも独特な笑い方で、胸にまで手が伸びる。
「こ、こんなとこっ、人がっ……ちょっとっ、やだっ……」
「じゃ、場所変えようぜ」
耳元で囁いて、耳を甘噛みして妖しく笑った顔を、今でも鮮明に覚えている。
私は半間のあの妖艶な笑いに、死神の危険な誘いに、まんまと引っ掛ったのだ。
その時点で、私は狩られる側になった。
ラブホに行くのは正直、初めてじゃない。半間は多分私の倍は行っている回数が多いんだろう。明らかに慣れた様子で、部屋へ向かう。
「半間ってヤリチン?」
「ばはっ! お前口悪ぃなぁー。気が乗った時の据え膳は食うタチなだけだ」
否定しない辺り、多少当てはまる部分はあるんだろうか。
部屋に入るなり、半間は私を抱き上げて、ベッドへ連れていかれる。
「シャワーは?」
「あぁ? 後でいいだろ」
確かに。ゆっくりシャワーをってタイプには見えない。
そして、この日から私と半間の関係が始まった。
断る理由も特になかったし、半間との行為は悪くなかったから。
学校に着いたのは昼前で、教室へ入るといつもの顔が近寄って来る。