第4章 新しく、ここから
修二の手術が終わった翌日から、私はずっと病院にいる。
病院側には無理を言って、専門的な事以外の世話はさせてもらっている。
これは、鉄太のお陰でもある。
毎日毎日、眠る修二に話しかけて、夜になると目を覚まさない彼の手を取っては泣いていた。
しっかりしなきゃいけないのに、涙は止まってくれない。
そんな日が続いてから、一週間が過ぎようとしていたある日。
眠る私の肌に、何かが触れた。
くすぐったさに目を開けて、目を疑った。
「よぉ、泣き虫ちゃん」
目の前で、修二が意地の悪い顔で笑っている。
「しゅ……じ……」
目の前の事が信じられず、私は修二の頬を抓る。
「いへー……なにひへぇる(いてー……何してる)」
「夢じゃ、ない……」
「また古典的な……古ぃーわ」
言って笑う修二に、私は抱きついた。
全身で修二の存在を確かめる。
「ばはっ! 随分熱烈じゃねぇーのよ……。非常に嬉しいんだけどよぉ、痛ぇ……」
「ごっ、ごめんなさいっ! 大丈夫っ!?」
急いで修二から離れて、また椅子に座り直す。
つい、体が勝手に動いてしまった。
よく考えたら、私は修二から離れようとしていた。それを彼に伝えたわけだし、私がここでこうしているのは、不自然なわけで。
私は立ち上がる。
「わ、私、目が覚めた事、先生に話してっ……」
「好きだ」
「………………へ?」
手首を掴まれ、そちらに気が行っていたからか、修二の言葉につい変な声が出た。
「アホ面」
「なっ!? し、失礼ねっ! 突然そんな事言われたら、誰だってっ……。て、いうか……いつから?」
からかうみたいに笑う修二に私が聞くと、少し考えるみたいに斜め上を見る。
「多分、会った時からだな」
言って、修二はスマホを私に渡した。見ろと言われて視線をスマホに落とすと、電話帳に並ぶ名前に違和感があった。
そこには、鉄太や一虎、他にも男の人の名前は並んでいるものの、女の名前が私以外に入っていなかった。
「……何で?」
「全員切った。まぁ、元々ヤるだけの奴等ばっかだったし、お前に会ってから、俺はお前しか抱いてねぇ」
「嘘っ……だって……じ、じゃぁ、あの子は?」
怪訝そうな顔で「誰?」と問い返される。