第4章 新しく、ここから
〔半間修二side 3〕
見つけたが、田辺陽介の名前を口にする。
他の男の心配をして、俺を拒絶するに、苛立った。
その時、俺は嫌がるを無理矢理抱いて、更に痛みに泣くに酷い言葉を浴びせた。
頬を殴られてを見ると、涙を流しながら睨むその表情にゾクゾクする。
出来るだけ優しく、甘いキスをした。
駄目だ。やっぱり渡せねぇ。田辺どころか、誰にも。
初めての、女への独占欲。
だが、は俺にこの関係をやめたいと言った。
頭が言葉を理解しようとしない。
状況が飲み込めない。
それに追い打ちをかけるように、誰かにぶつかられた。
フードを被った誰かが、何が呟いている。
の声が耳に届いた時、脇腹に重く鈍い痛みが走り、見るとナイフが刺さった部分から、血が滲んでいた。
完全に油断していた。
ただ、に何もなくて、よかったと思う。
気が強いくせに子供みたいに泣いているの頬に、血で汚れた手を伸ばす。
口から出る言葉は、どれもイマイチ気の利かない言葉ばっかりで。
死んじまうのか。を残して。に、何も伝えられないまま。
情けないと自分を笑いながら、意識が朦朧としてくる中、遠くでサイレンのようなものが響いていた。
明るい光の中、目を開ける。
今までいい事なんて一つもしてこなかった俺が、間違ってまさか天国にでも来ちまったのか、なんて考えていると、手に何かが触れている感触を覚える。
白い天井から、視線を横に移動させた。
「…………」
俺の手を握り、ベッドに頭を預けて眠るがいた。
動くとまだ痛む体に力を入れ、俺は軽く上半身を斜めにして、空いている方の手での髪に触れた。
柔らかくて、細くて、指に引っ掛かる事なく滑る髪から、ふわりと甘い香りがする。
髪に触れたまま、ベッドに体を預けての寝顔を見つめる。
泣いていたのか、目の下が赤い。
指でそっとそこを撫でると、が少し身動ぎする。
大きな目がゆっくり開かれ、更に見開かれた。