第4章 新しく、ここから
〔半間修二side 2〕
最近歌舞伎町付近で、女が攫われてそのまま輪姦される事件が増えていた。
田辺陽介は、その事件の中心人物なのだろう。
女がどうなろうが、正直俺にはどうでもよかった。ただ、それがとなると、話は別だ。
「それって、もうめっちゃ好きじゃん」
「半間もついに女にそんな感情が生まれるとはな」
ニヤリと笑う稀咲と、嬉しそうに笑う一虎。
人を好きになるのは、初めての事だ。
二人に言われ、その言葉が妙に体に馴染んだ。
ただ、言われただけでは、自分の気持ちをすんなり信じられる程、俺にはその感情は不明瞭なものだった。
「半間先輩」
目の前に、いいお試し材料が舞い降りた気がした。
普通の男なら、簡単に騙されるだろうあざとい女が、机に座る俺のズボンのベルトを外し、チャックを下ろす。
手際がいい辺り、慣れてるんだろう。
恥じらうフリをして俺への印象をよくしたいのだろうが、俺には通用しない。
俺とこの女とでは、場数が天と地の差だ。
あんなくだらない経験が、こんな所で役立つとは。笑えて来る。
女が咥えていても、俺のモノは反応する事はない。
俺はもう、以外には勃たないようだ。
「もういい、やめろ」
「ど、どうして……先輩っ……私じゃ、ダメですか?」
上目遣いで目を潤ませてこちらを見る女にうんざりした俺の耳に、扉が開く音がした。
固まるの視線は、明らかに俺の股間に注がれている。
これは、万事休すか。いや、でもは俺が他の女と関係を持っていると思い込んでいるだろうから、ここでどう言ったところで意味はない。
去ったを追いかける為に教室を出ようとする俺に、女は後ろから抱きついてくる。
鬱陶しい。嫌悪しかない。
「離せ……」
「嫌ですっ! どうしてあの人なんですかっ!? 私の方が可愛いし、半間先輩の事好きなのにっ!」
嘘臭い言葉と、芝居じみた態度に虫唾が走る。
「あぁ? どう考えたっての方がいい女だろーが。ふざけた事言ってんなよ、勘違い女」
怯えた顔で震える女を放置して、俺はの後を追う。
女の為に走るのも、初めてだった。