第3章 歪に終止符を
フードを被って、修二の後ろで修二にピッタリくっついている。
何をしているんだろう。
「はははっ……コイツがっ……こ、コイツが悪いんだっ……」
彼は一体何を言っているのか。
修二は小さい声で「ダリィ」といつもの口癖を呟いて、陽介を見下ろした。
陽介の顔に恐怖の色が広がっていく。
修二の拳が陽介の顔にめり込んで、陽介が地面に叩き付けられる。
視界に入ったのは、その光景だけじゃなくて。
修二の脇腹に刺さるナイフと、真っ赤な血。
「しゅ……じ……」
「……何て顔してんだ、バーカ……」
笑って言う修二が、膝から崩れ落ちる。上半身を支えるように、修二の体を受け止めた。
「やだっ、修二っ……」
泣く私を弱々しい目で見ながら、修二は口を笑いの形に変える。
「これくらいどーって事ねぇよ……泣くな……っ、いい女に看取られんのも……悪くねぇ……」
「ふざけた事言わないでっ! しっかりしなさいよっ! あんた死神なんでしょっ!」
「アホか……」
笑った修二の口から、血が溢れ出る。
服が汚れるのも気にしないで、私はずっと修二に声を掛け続けた。
血で濡れた手が、弱々しく私の頬に触れる。
「……」
「修二っ……ねぇ……修二ぃ……絶対、死なせないからっ……死んだら、許さないからっ……」
「あはっ……怖ぇ女……」
遠くで救急車の音を聞きながら、私は子供みたいに泣き続けた。
病院で処置を受けている間、私は椅子に座りながらただ天井を見上げていた。
陽介は警察に捕まった。
連れて行かれる彼を、私は救急車の中から見ていた。
「っ!」
呼ばれてそちらを見ると、泣きそうな顔の静が走って来る。
後ろからは一虎と鉄太がいた。
静に抱きしめられ、私の目からはまた涙が溢れて零れ落ちる。
「……陽介が……いて……血が……いっぱい出て……っ……」
「うん。もういい……」
抱きしめられ、背中を撫でられながら、私は涙を流し続けた。
枯れたと思った涙は、全然止まってくれなくて。
静かな病院には、時計の音がやけに大きく響いていた。
そして、手術室の扉が開かれた。
先生が出てきて「大丈夫」だと言われた瞬間、私の意識はそこで途切れた。